読書手帳【ルビンの壺が割れた】編
【タイトル】ルビンの壺が割れた
【著者】宿野かほる
【読書期間】2021年6月30日〜7月7日
【評価】(五段階)★★★★★
【あらすじ】
「突然のメッセージで驚かれたと思います。失礼をお許しください」--送信した相手は、かつての恋人。フェイスブックで偶然発見した女性は、大学の演劇部で出会い、二十八年前、結婚を約束した人だった。やがて二人の間でぎこちないやりとりが始まるが、それは徐々に変容を見せ始め……。先の読めない展開。読めないラスト。前代未聞の読書体験で話題を呼んだ、衝撃の問題作!
【感想】
ブログのタイトルにもある通り、上半期で一番衝撃を受けた小説です。
まず、あらすじに補足してお話しの概要を記載したいのですが、この小説は全編、主人公とヒロインのフェイスブックでのやり取りという斬新な内容で物語が進んでいきます。
歌舞伎にハマっていた中年男性、水谷一馬が、たまたまフェイスブックで歌舞伎のページを開いていた時に、かつて結婚の約束までしていた恋人、結城未帆子のアカウントを見つけます。懐かしく思った水谷一馬は、結城未帆子のアカウントへメッセージを送るのですが、そのメッセージの中では、結城未帆子は亡くなった人と記載されています。
冒頭からしばらくは水谷一馬からの一方的なメッセージばかりが続くため、未帆子は本当に死んでしまった人なのだと思い込まされまれるのですが、、、
ここが一つ目の衝撃。
読み手には完全に故人だと思い込まされていた未帆子から突然返信が来るのです。
水谷一馬曰く、死んだと思い込まないと平静を保っていられなかったとのこと。その原因として、二人の結婚式の当日に未帆子が行方をくらましたことなどがあるのですが、それはまだ先に分かる話。
未帆子からの返信をきっかけに二人のやり取りが始まります。大学の演劇部で出会った二人がどれほど互いに惹かれていたかなど。ノスタルジックな雰囲気でやり取りが行われ、二人の過去が徐々に紐解かれていくのですが……。
やり取りが中盤に差し掛かると、それまで抱いていた印象がガラリと変わります。それも一度と言わず何度も。二人のやり取りを読み進める度に変わります。死んだと思っていた人が生きていたという最初の衝撃を悠に超えていくほどです。
そしてその衝撃を繰り返した末のとんでもないラストは誰も想像だに出来ないでしょう。
冒頭の部分が少々ネタバレになってしてしまいましたが、この物語はこれしきのネタバレは雑作もなく、読みたいと思って頂くキッカケには必要であるとの判断しました。
ご了承くださいませ🙇♂️
著書のタイトルでもある「ルビンの壺」というのは教科書などでも見た記憶があるかと思いますが、デンマークの心理学者エドガー・ルビンが考案した多義図形です。
見方によっては、壺に見えたり、人間が向かいあっているようにも見える有名な図形ですが、この小説はまさにそれ。
絵に出来て、文学には出来なかった表現をやってのけたような、この小説を模倣した作品がこれから沢山出てくるだろうという、新しい風になる予感のする小説でした🏺
タイトル通り、読み手によって解釈が全く異なってくるような作品で、この小説を題材に読書感想会などを開いたら盛り上がりそうだなと思います。
もしもう既に拝読済みの方がおられましたら、是非とも感想を言い合いたいですので良ければメッセージなど頂けると嬉しいです。
以上で松宮奏の読書手帳を終了させて頂きます。
不定期ではありますが、今後も行なって行こうと思っていますので、是非ともよろしくお願いします🙇♂️